9カ国の視点が、まざり合う

地方創生の現場に、世界の視点が入ると何が起きるのか。福井県で実施された英語によるローカルイシューズ・プログラムでは、留学生たちが 「福井県内の観光課題」 をテーマに、自国の視点を活かした改善提案に挑戦した。

参加したのは9カ国・9名の学生。初日9名、最終日4名のアンケート、そして2名の学生インタビューから、短期間ながらも確かな 「気づき」「成長」、そして 「実践力」 の姿が浮かび上がってくる。

Program Overview
開催期間2026年3月16日〜3月26日(全6回)
形式対面+オンラインのハイブリッド
最終報告会3月26日(木)10:00–12:00
@ グラングリーン大阪
参加者9カ国・9名(3チーム編成)
使用言語英語
テーマ母国から福井への観光者増加

01多様性が生む「気づき」の土壌

参加学生はインド、インドネシア、ベトナム、ロシア、シンガポール、韓国など多国籍。専攻も政策科学、バイオサイエンス、国際関係、AIなど幅広く、議論は自然と多角的になった。

共通していたのは、「日本社会に貢献したい」という前向きな姿勢である。出身も学問領域も異なる9名が、同じ地域課題に向き合うとき、そこには一人では到達できない多層的な視点が生まれる。

02最終日に見えた「現実」と「可能性」

3日間の学びを経て、学生たちの視点はより具体的で現実的になっていた。

日本への貢献意識の深化

観光分野への関心が高まり、「自分がどう貢献できるか」を主体的に考える姿勢が強まった。当初は漠然としていた貢献意欲が、プログラムを通じて具体的なアクションへと変換されていく。

日本での将来像

最終アンケートに回答した4名全員が「考え方が変わった」と答えている。地域課題の存在、観光の可能性、自国との文化的な橋渡し——こうした理解が深まったことで、日本でのキャリアを具体的に描けるようになった学生が増えた。

実践的な学びの成果

多文化理解、戦略的思考、マーケティング、国際関係など、実践的な学びが中心となった。満足度も全員が「満足」以上と回答している。こうした変化は、個別インタビューにも色濃く表れている。

Interview 01
Portrait illustration
G.M.P. さん
インドネシア出身 ・ 大阪大学 大阪国際公共政策研究科 博士課程1年
「日本は完璧じゃない。
その気づきが、僕を成長させた。」

来日して半年の G.M.P. さんが日本を選んだ理由は、「日本の教育と研究の深さ」に魅力を感じたからだ。

日本で学んだ人は、知識も研究もより深い。だから自分もここで学びたいと思ったんです。

また、日本で働くためには日本語が不可欠だと考えている。翻訳だけでは本当の信頼関係は築けない——言語の壁を越えることが、人と人との絆を深める鍵になるという認識だ。

プログラム参加の理由は、「現実の課題に挑戦したかった」からだ。

現実の世界で起きている課題に挑戦できるから。インドネシア人としての視点からも貢献したかった。

最終日には、彼の視点はさらに深まっていた。「福井とインドネシア、両方の視点で考えることで、分析力が大きく鍛えられました。」そして、日本への認識も変化したという。

日本は先進国だけど、福井のように課題が残る地域もある。どこも完璧だと思っていたけど、現実を知って考え方が変わりました。

しかしその「ギャップ」は、彼にとってマイナスではなかった。むしろチャンスとして映ったのだ。外国人学生が日本でキャリアを築く可能性を、具体的に感じ取った瞬間だった。

大阪大学大学院で公共政策を学ぶ彼にとって、今回の経験は「理論を現実に落とし込む」貴重な機会だった。「普段は数字を扱うけど、このプログラムでは数字を“現実に使える形”にする必要があった。勉強だけでは足りないと実感しました。」

最後に、日本企業へのメッセージを語ってくれた。

外国人学生にも、日本で成功したいという強いモチベーションがあります。それを理解してほしい。

どこも完璧だと思っていたけど、現実を知って考え方が変わりました。むしろチャンスだと思えた。

— G.M.P. さん(大阪大学・インドネシア)
Interview 02
Portrait illustration
H.V.P.N. さん
ベトナム出身 ・ 立命館大学 政策科学部 CRPS 3年
「小さな提案でも、
誰かの役に立つなら意味がある。」

H.V.P.N. さんが参加を決めた理由は、大学の専攻とつながる 「実際のケースに挑戦できる」点だった。「教室ではなく、本物の課題に取り組める大きなチャンスでした。」

一方で、参加者の多くが福井に行ったことがない点には不安もあった。

行ったことがないので、提案が本当に役に立つのか心配でした。

しかし、彼女は日本の観光分野に強い可能性を見ている。「福井はまだ有名じゃないけど、小さな県でも観光客を増やせる未来があると思います。」

将来のキャリアについては慎重だが、その姿勢は決して後ろ向きではない。

日本で働くイメージはあまりないけれど、それでも日本に貢献したい。小さな提案でも誰かの役に立つなら意味があると思っています。

最も印象に残った学びは、5W1Hの活用だった。「SWOTは使っていたけど、5W1Hはもっと詳しくて良かったです。」また、日本語の重要性についても強く認識している。

03最終報告会——
3チームが示した、
「届け方」の可能性

3月26日(木)10時から12時、大阪・グラングリーン大阪にて最終報告会が開催された。9名の留学生が3チームに分かれ、「母国から福井への観光者増加」をテーマに、それぞれの提案を発表した。

最終報告会にて、留学生たちの発表に耳を傾ける福井県担当者(2026年3月26日 @ グラングリーン大阪)
Photo 最終報告会にて、留学生たちの発表に耳を傾ける福井県担当者。2026年3月26日 @ グラングリーン大阪。

印象的だったのは、どのチームも単に宣伝方法を考えるだけでなく、情報をどのように相手へ届けるかという点まで具体的に検討していたことだ。ターゲットにどう届けるか——マーケティングの“実装”に踏み込んだ視点は、短期間のプログラムとは思えない完成度だった。

発表では各チームのメンバーの役割分担が明確で、全体の流れにもまとまりがあった。限られた準備期間のなかで、チームとしての連携の良さが感じられる時間だった。

各チームの提案はいずれも完成度が高かった。参加してくれた留学生にも、ぜひ福井県へ観光に来てみたいと思ってもらえたら嬉しい。

— 福井県関係者(最終報告会にて)

提案は「作って終わり」ではなく、その先の関係性を見据えたものとして受け止められた。地域と留学生の間に、一つのプロジェクトを超えた双方向の関心が芽生えた瞬間だった。

04企業と地域をつなぐ、
新しい協働のかたちへ

今回のプログラムから見えてきたのは、「留学生の視点は、地域課題に新しい可能性をもたらす」という確かな事実だ。

観光は国際学生が最も貢献しやすい分野であり、実践的な学びは彼らの視野と自信を大きく広げる。地域の課題を知ることで、日本への理解はより現実的になり、そこから生まれる小さな提案は、地域にとって大きな価値を持つ。

福井でのこの小さな一歩は、地方創生の未来を変える大きな可能性を秘めている。

— For Corporate Partners

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